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​《物語》

猪って豚の親戚?

 

 

冷蔵庫に眠っている頂き物の猪・・・

恐る恐る解凍し、いつもは豚で作る燻製をその日初めて猪で作ってみました。
仕上がった燻製を味見。「んっ?美味しい〜」

臭そう、固そう、ジビエに対するイメージが一掃されました。

あっさりとした脂に弾力のある肉質。後を引く美味しさ。

その猪は、猟師歴50年、精肉・とんかつ店を営んでおられた建石美将さんが解体処理したものでした。

狩猟仲間と切磋琢磨し見つけた独自の仕留め・解体・熟成方法は、クセのない、旨味を最大限に活かしたジビエ肉を作り出したのです。

 一匹狼ならぬ一匹猪の戦い

 

「建石さんのジビエを多くの方に食べてもらいたい」

 

猪の虜になった私は、猪肉販売という夢に向けスタートを切りました。

しかしそこには、ジビエ食肉処理業という高いハードルが存在していたのです。
方々へ足を運び申請手続きを繰り返し、聞いたこともないような言葉の数々で頭はパニック状態。片手間では向き合えな
​いことなのだと腹を括り勉強しました。

何より苦戦したのは、この町には行政管轄のジビエ加工場が存在するということ。多くの猟師はそこへ猪を持ち込んでしまいます。猪への想いや仕留め方など、心の通う猟師の方を探すべく、一匹狼ならぬ一匹猪の挑戦は続きました。挫けそうになる心を奮い立たせてくれたのもまた、建石さんから届く猪。そこにはやはり、無限の可能性があると信じ疑いませんでした。

 販売をするつもりが解体をすることに

 

ようやく販売に向け目処が立ち始めた頃、猪を届けてくれていた建石さんが体調を崩され猟場への復帰が困難になってしまいました。ここまで来て引き返すことはできないと、仕留めていただいた猪を自ら解体するとに。

 

「猪かかったんがどうすっぺよ」
 

一本の電話。やるしかない・・・


震える手でハンドルを握り、急いで現場へ到着すると、そこには今にも襲いかかってきそうな血走った目の猪が・・・

 

・すでに死んでいる猪は使用しないこと

・銃では仕留めないこと

・仕留めた後はすぐに運び解体にかかること

これが建石さんの教え。

食道を手探りで探し、心臓・胃・肝臓、腸と取り出していく。
傷つけないよう慎重に・・・

さっきまで私を睨んでいた猪。

さっきまでそこにあった命。

温かな内臓に触れる度に不思議と心が落ち着き、安らかな気持ちになっていきました。命の尊さを感じた瞬間でした。

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大地の恵みをあなたへ

  • 料理人の父のもとに育ち、小さな頃から家業を手伝う。

  • 平成15年、予約制懐石料理店「わさび」を埼玉県越谷にて開業。父を招き15年間和食の真髄を学ぶ。

  • 令和元年、館山へ移住。亡き父の想いを胸に「わさび」再開。

  • 令和2年、猟師の建石さんと出会う。猪の美味しさと可能性に魅力を感じ師事。

  • 令和4年、館山ヴィルトファクトリー開店

野山を駆け巡りストレスなく生きてきた猪は、低カロリー高タンパク。ビタミンなどを豊富に含み、フィットネスやアンチエイジング業界でも注目を集めています。日々の体調管理から美容まで。幅広い効果が期待できる猪は無限の可能性を秘めています。

天国の師匠をはじめ、多くの方々に支えられ館山ヴィルトファクトリーはオープンしました。害獣として処分されてしまう猪が生まれ変わり、皆さんの暮らしを豊かで幸せにしてくれるよう、これからも願って止みません。

館山ヴィルトファクトリー代表

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